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あたまいっぱいの鹿のはなし:[6]January.2014- 赤木仁

二千九年一月から十二月までのお話はこちらです:1[ link ]

二千十年一月から十二月までのお話はこちらです:2[ link ]

二千十一年一月から十二月までのお話はこちらです:3[ link ]

二千十二年一月から十二月までのお話はこちらです:4[ link ]

二千十三年一月から九月、前回までのお話はこちらです:5[ link ]

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湯につかろうとする鹿

ウ: 探しモノがありますので  
   私が戻るまで湯穴から出ないで下さい
   いいですか 入ったら 出られるようになるまで
   出ないで下さい

右: それはいつ

ウ: 一度きりしか入れないのですから   
     
   三つが入ろうとしている穴は
   ふち一杯まで湯を湛えて
   入れば溢れそうで
   鹿だったら五十は入れる広さで
   ほぼ丸の形をしている
   湯気ではっきりとはしないが
   穴の中心部には塔が
   立っているようだ

(一月)

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鹿は恐る恐る近付き
水面に立つ湯気の先に見える
湯底の深さを思ってみる

右: 深いの  

中: いや これなら足が付く
   ウサギリスの口ぶりからも
   それほど深いとは思えない

中にうながされて同意
えい と飛び込む
首の中頃までの深さだ

右: ああ良かった

中: でも このままじゃいけない
   もっと足を折って 左の頭がすっぽり
   水の中に入る様にしなければ

鼻先を出す様にして潜り込む

     
右: こんなことをして左が溺れてしまったら

(二月)

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繭に包まれた左も一度は水中に
でも浮き上がろうとする
右と中は協力しあって 湯中へ引きもどす

右: あたしとあなたの間に左が居たら
   上から抑え込めるのに  

中: 繭の中の左は 溺れないのかな

ウ: それはないでしょう
   左さんが水を飲んで溺れたら
   あなたたちも 溺れますよ
   どうです 体の中に水が入って来る
   気配が有りますか

かろうじて湯から出ている耳元へささやく

ウ: あー まだ お湯からは出ないで下さい
     
右: いったいどれくらい浸かっていればいいの
   体も頭もぼんやりしてきたわ
(三月)

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ウ: ここのはそれほど熱くはないでしょ
   もうしばらくそのままで居て下さい

鹿達に見えない所で 何だかわからない
角ばった物を どこかから持って来て
せっせと形を変えるのにいそがしい

繭の左が浮かび上がらなくなったので
頭半分を湯面から出して

中: ああ のぼのぼする

右: ああ ふれふれする

ウ: おまたせ
   いかがです 温かい水は
   飲んでしまってもかまわないのですが
   飲む為の水ではありませんよ

ウ: 注意が好き    

(四月)

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(五月休み)

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ウ: おまたせ おまたせ
   では始めましょうか
   さあ さあ こちらへ こちらへ
   あなた達が入ってから
   天道さまが拳一つ動かれた
   よい頃でしょう
   繭のお頭をこちらへ向けて下さい
   そうです そうです
   私が触れるように

繭をまさぐるウサギリス
天辺からよく水に濡れた首元まで
何かを探して執拗に

ウ: ありましたよ
   ほら ほら ここに ここに

それはとても細い ほつれのようなもの
その先を握って 繭の廻りを
二度三度 さらに十度ほども繰返す
鹿の鼻先から 後足の踵までありそうな
糸が現れた
  
(六月)

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ほつれた糸の先を握って引き摺って
木で出来た何かに器用に結び付け
大振りな動きで廻し始めたウサギリス

右: 左の繭から糸が引き出されてゆく 

中: 搦め取られた糸が集まって大きくなってゆく
   左を包んでる繭が小さくなった
   
右: 願っていたこと
   左の頭がうっすらと見える 顔がわかる

糸の操るのがどんどん早くなる

中: なくなった でも まだ 口から
   するする 糸が出る

右:  あら 糸の先に何か付いている
   口から それが出ようとしている

ス ポン

ウ: 手繰り寄せた糸が途中で切れなくて
   本当に良かったです

  
(八月)
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つづく>>>

赤木仁オリジナルBOOKリスト
[作品集]:
「洪水の前」というこの本のタイトルはアンドレ・カイヤット監督1954年の映画からインスパイヤされました
これまでの赤木仁のオリジナル油彩やえんぴつデッサン、ドローイングなどが収録されています

[タイトル]:洪水の前 [画集]
[著者]:赤木仁
[装幀]:中島英樹
[出版社]:美術出版社 _2000/04/20 出版
[定価]:本体価格3000円
[単行本]: 103ページ
[I購入方法]:
※LIBRAIRIE6 / シス書店
librairie6.shop-pro.jp/
※有名オンラインショップ
※赤木仁個展会場
※webmagazinekimbou:on line store[>>>link]

[絵巻物語]:
[タイトル]:AZUCHI あたまいっぱいの鹿_ハードカバー
[著者]:赤木仁
[装幀]:有山達也
[出版社]:リトル・モア_2007/11/04 出版
[定価]:本体価格2000円
[仕様]:A5ヨコ変型/96ページ/上製

[I購入方法]:
※リトルモアブックス
www.littlemore.co.jp/store/products/detail.php?product_id=677
※LIBRAIRIE6 / シス書店
librairie6.shop-pro.jp/
※有名オンラインショップ
※赤木仁個展会場

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赤木仁プロフィール:
石川県生まれ。画家、金子國義に師事。88年に独立。展覧会での作品発表を中心とする。2014−2015年は、ヤマタノオロチを題材にした"2014年美連協大賞受賞展覧会「スサノヲの到来 −いのち、いかり、いのり」"で、足利市立美術館、DIC川村記念美術館、北海道立函館美術館、山寺芭蕉記念館、渋谷区立松濤美術館と5つの美術館を巡回した。2012年は、チャリティ広告展「日本繁昌大展覧会」でまねき猫のマークで参加している。初個展以来、10才までの銅山跡での体験を神話化した作品を描き続けている。他にも雑誌、新聞、単行本、Tシャツデザイン、マークデザインなど、色々な表現方法で活動中。作品集として画集「洪水の前」美術出版社が、またお話と絵を担当した絵巻物「AZUCHI あたまいっぱいの鹿」をリトルモアから出版、発売中。
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