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あたまいっぱいの鹿のはなし:[3]January.2011-December.2011 赤木仁

二千九年一月から十二月までのお話はこちらです:1[ link ]

二千十年一月から十二月、前回までのお話はこちらです:2[ link ]



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見えてはいけないモノが 見える
見えてるはずのモノが  見えない

これは 有るモノか
これは 無いモノか

黄に見えるモノは すっぱい
赤に見えるモノは あまい
青に見えるモノは にがい

フ: いけないよ 私が見えるなんて
   良いことは 私が見えないこと

中: あなたが あたし達に話し掛けましたよ
  
フ: だからいけないんです 私の話し掛けがわかるのが
   私はだれにでも話し掛けるんです
   でも聞こえちゃいけないんです

左: じゃあ どうして話しかけるの

フ: 私の声が誰にも気づかれないのを知る為です

右: どうしたらいいの どうしたら

フタイが鹿達に耳打ちする


鹿達: あなたなんて 見えない

鹿達: あなたなんて 聞こえない


フタイがいなくなる 鹿達の目から 全の景色が消え
全ての音が消えた

右: なんにも見えなくて なんにも聞こえない でも
   よかった 匂いはする

中: きっと 味も有るよ
  
左: 触れることもね

右: 行かなくちゃ

(一月、二月)

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左: どうして 見えなくなったんだろう

右: フタイが 景色を持っていっちゃったから

左: どうして 聞こえなくなったんだろう

中: フタイが 全ての声を連れていったから

左: フタイって何だったんだろう


今までよりもすごく強く 色々なニオイがする
甘い草 塩っぱい土 にがい水 すっぱい実
けむたい皮 くさい石 からい芽


左: 今 歩いている所がどんな所か わかるね

右: お家に近づいていないの

中: 近づいてるのかい

左: 近づいちゃいない

右: そうなの


中: 止まらなきゃ

右・左: どうして

中: 崖のニオイがする。これ以上前へ行けば 落っこちるよ
     
(三月)

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瞼は開けてるはずなのに見えない
耳だって動かせるのに聞こえない
生草がベタベタしく絡み付く
葉っぱの刺が足の生毛を引きつる

「飛びましょうよ 思いきって」

足元で何かが 話し掛けてきた
後足も押してくる
右前足に当たっている小石を 前へ押し出してみる

ズ ズ ザ ザザーザ ザ

斜面をすべって行き すぐ止まった
そんなに深くないのかな
そっと前足から踏み出してみる

ズズ ズズズズ ズー ザーー

止まらない 深いんだ
前足も後足も踏ん張り 倒れないようにする

ゾゾゾゾゾー

勢いがついて止まらない

「さっきの小石は 崖の木に引っ掛かってるよ」
   
(四月)

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右: すべって 止まらない

中: 何処へ

未詳(よくわからないモノ): 行きたい所へ 行けますよ

左: コロニーへもどりたい

未: 角一つの鹿のコロニーへ ですね

右: あなた あたし達が見えてるんでしょう

未: はい

右: だったら 頭がいっぱいの鹿のコロニーでしょ

未: 僕らの仲間内じゃ あん達のことは
   角一本の鹿と言うんだけどね

中: 僕らに角が生えるとしたら 二本だよ

左: そうだよ 二本生えるよ

右: 右目の上と左目の上のひたいにね

未: いいえ ひたいの真ん中の
  一本しか生えない所に 一本生えるんです

右中左: そんな角が生えたら もうコロニーには帰れない

未: だから 角が一本の鹿のコロニーへ行くんです
  さあ 行きましょう

(五月)

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それぞれの気持ち

中: 三つの頭に 二本づつの角が生えたら
   絡み合って大変そうだ

右: やっぱり あたしが真ん中じゃなきゃ だめじゃない
あたしは角なんて生えないもの
生え出す前に 頭の場所を変えなきゃ

左: 一本角がいっぱい...って どんなだろう

未: やっぱり あなたたちは あそこへ行った方がいいよ
このあたりじゃあそこしか お仲間は居ないよ
   だいたい この坂はそこへ向かってるんだもの

未が体を押し付けて 行き先をこっそり変えてしまう
本当は別の場所へ向かっていたのに

何だろう変なニオイがする 

川のニオイでもない 
岩のニオイでもない
木や草でもない 

生ぐさいニオイ

(六月)

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ひしゃげた松がへばり付いた
黒緑の岩と 銀砂の岩の間の水たまりに
数十のあたまいっぱいの生き物が
腰のあたりまでつかって それぞれに楽しんでいる
足元はでこぼこの岩が一面を覆っていて
その先 岩の向こうには はるかにつづく
大きな沼が そこから 生臭さが臭ってくる

未: ほら居たろう 一本角の仲間が
君らには もう 見えてるだろう
絡み合って大変そうだ

鹿: そういえば さっきから見えてる

未: ボクは何に見える

左: ウサギ

未: なぜ

左: 耳が長いから

未: それじゃ これでは

耳を隠して 長いシッポを出す

右: リスね あなたリスだったの

未: シッポ長ウサギ 耳長リスです

中: どっちなんだ

未: どっちでもあり どちらかではない

だから未定(ミジョウ)
   でも あんた達は 角が生える生き物だから
   彼らとは仲間さ

(七月)

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その彼ら

大人とおぼしきものの頭には
一本の真直ぐな長い角
小さいのも居るが まだ生えてはいないよう
一つの体に いくつかの頭が
有るような 無いような
あまりにも みなが体をよせあっているので
ここからでは はっきりしない
それに あの ツルリとした丸い顔
あんな顔の鹿 見た事ない
それに この ニオイ
僕らと同じものを食べてるんだろうか

(八月)
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(九月休み)

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未: 海鹿って言うんだ
   角が生えてて 海に居るからね

左: 海って何

未: 目の前に在るだろう 水が

中: このいやなニオイの元らしき いっぱいの水

右: あんなの鹿じゃない

未: そうかい いくつも頭が重なってて
  角があるから 鹿なんだよ
  そいつが山に居れば 山鹿 あんたたち
  海に居れば 海鹿 あいつら
  それから でかいオス お前達のオスもでかいだろ
  それに 背中に白い斑点がいっぱいある
  足みたいのが 四っつある

中: 足みたいって 足じゃないの

未: 足なんじゃないかな

中: 君は似ている所は色々並べるけど
   似ていない所は無視するんだね

未: 仲間はにているだけで 仲間なんだよ

左: 連れてってよ もっと近くに

近づくと パラパラと ばらけてゆき

左・中・右: みんな 一つ頭だ

未: あーあ ばらけちゃったね ああなるとだめだね
(十月)
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未: バラ バラ だったね
   あんなだなんて思ってもみなかった
   でも 大丈夫 まだまだ 君らの仲間を知ってるよ
   次に行こうよ

鹿は無言で歩き出す
 
未定は新たなコロニーを教えるという

未: 顔が気に入らなかったね
   その点を注意して案内しましょう

三つはもう聞く気はないので

未定が示す方向とは逆の砂浜へ向って歩いて行く

ズンズン行くと 未定も後を追って来て

未: そっちへは行かないほうがいい
   僕だったら行かない
   それより ここを登って 砂の丘を越えましょう

鹿を追いかけながら未定はそっちへ誘う

三つは海に沿った丘をどんどん歩いて行く
  
(十一月)

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左: ねえ ウサギリスに聞こうか
   この砂どこまで続くのか
   
中: 知ってるかな
  
右: 知っていて 教えると思う

中: 知っていて 教えますよ
   この砂はずっと続きます 何日歩いても
   まかせて下されば
   あなたがたの大好きな木の在る所へ
   御連れしましょう

ウサギリスは浜辺を離れ
内陸へ行きましょうと繰り返しすすめる
ウサギリスを信じられない鹿は
その言葉を無視して浜辺を歩いていった
ずいぶん行くと 波打ち際まで出っ張った
とほうもない砂の丘が行く手をさえぎった
やむなく砂の丘を乗り越える為に登りだすと

ウ: おーい そっちへは 僕は行けないんだ 戻って来てよ

右: よかった ついてこれないんだ
 
(十二月)
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二千十二年一月ページ:4につづく>>>


赤木仁オリジナルBOOKリスト
[作品集]:
「洪水の前」というこの本のタイトルはアンドレ・カイヤット監督1954年の映画からインスパイヤされました
これまでの赤木仁のオリジナル油彩やえんぴつデッサン、ドローイングなどが収録されています

[タイトル]:洪水の前 [画集]
[著者]:赤木仁
[装幀]:中島英樹
[出版社]:美術出版社 _2000/04/20 出版
[定価]:本体価格3000円
[単行本]: 103ページ
[I購入方法]:
※LIBRAIRIE6 / シス書店
librairie6.shop-pro.jp/
※有名オンラインショップ
※赤木仁個展会場
※webmagazinekimbou:on line store[>>>link]

[絵巻物語]:
[タイトル]:AZUCHI あたまいっぱいの鹿_ハードカバー
[著者]:赤木仁
[装幀]:有山達也
[出版社]:リトル・モア_2007/11/04 出版
[定価]:本体価格2000円
[仕様]:A5ヨコ変型/96ページ/上製

[I購入方法]:
※リトルモアブックス
www.littlemore.co.jp/store/products/detail.php?product_id=677
※LIBRAIRIE6 / シス書店
librairie6.shop-pro.jp/
※有名オンラインショップ
※赤木仁個展会場

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赤木仁プロフィール:
石川県生まれ。画家、金子國義に師事。88年に独立。展覧会での作品発表を中心とする。2014−2015年は、ヤマタノオロチを題材にした"2014年美連協大賞受賞展覧会「スサノヲの到来 −いのち、いかり、いのり」"で、足利市立美術館、DIC川村記念美術館、北海道立函館美術館、山寺芭蕉記念館、渋谷区立松濤美術館と5つの美術館を巡回した。2012年は、チャリティ広告展「日本繁昌大展覧会」でまねき猫のマークで参加している。初個展以来、10才までの銅山跡での体験を神話化した作品を描き続けている。他にも雑誌、新聞、単行本、Tシャツデザイン、マークデザインなど、色々な表現方法で活動中。作品集として画集「洪水の前」美術出版社が、またお話と絵を担当した絵巻物「AZUCHI あたまいっぱいの鹿」をリトルモアから出版、発売中。
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